PC産業の「失われた5年」に打開策はあるか

まあ無理でしょう。
「こういうことをするのに道具としてパソコンは不可欠」という「こういうこと」を新たに生み出す必要があるし、その「こういうこと」はPCを使う誰もがするようなことでないといけない。
今後はそれを「生み出し続けていかないといけない」のだよ。


TVが見られるとかね、マルチメディアがどうとかこうとか、普通の人が大枚はたいてPCの環境そろえてでもやりたいと思うようなことではないもの。
いまのPC業界が出してくるPC活用提案って、「まああれば使うかもしれないけど必要かどうかって話だと不要かな」ってものばかりだもの。


PCは車と違って、用途が変わりさえしなければ、それに対する性能の劣化が無い道具。
だから何年かで定期的に買い換えるなんて必要は無い。
Windows95あたりの時期にPCはコモディティ化して急速に広まった。Xpが出たときには明らかに環境が改善されることと、真新しさに釣られて買い替えが進んだ。単にWebを見るだけの人でもFlashとか動画とかのリッチコンテンツの普及のおかげで、よりパワーのあるPCを要求するようになったってのもある。
では、それ以降にPCの買い替え(というより、PCの強化)を進めなければならないようなコンテンツ(なんか全部ひっくるめてコンテンツとか言うけど)の台頭があったかというと、「無い」よね。


この記事の中で大河原さんは「2台目のTVとしてのPC」と言っているけども、1台目のTVからして怪しい状況で2台目のTVが果たしてあるのか。
逆に無理矢理な地デジへの切り替えによって「じゃあTVはもういい」とTV離れが進むんじゃないかという懸念もある中で、それがPC買い替えの「売り」になるかもというのは余りに楽観的だろう。


近年、メーカはPCにTVチューナを強引に付けて販売してるので、それによってPCでTVを見ることが当たり前になってしまった人の買い替えは進むと思う。
けれど、TVチューナ付きのPCを買ってもTVなんて見てないという人は間違いなくいる。実はうちの実家のPCはそういう扱いだ。各部屋にTVがあるのになんでわざわざPCで、ということになっている。
結局は、PCで見ることのメリットが無ければ、上で書いた「PCでTVを見るのが当たり前になった人」以外がそれを要因として買い換えることは無いはずだ。
だからいくら「2代目のTVにPCが最適」と宣伝したところで同じこと。
「PCでTVを見るメリットは?」という疑問をスルーして、マニアでは無い人がTVよりもPCを選択するなんてことは無いよ。
だってそのメリットを見出せなければ、「無駄にPCまで買い換えている」ことに他ならないもの。


あともひとつ言いたいのは、仮にそんな要因で買い替え需要が発生したとしても、やっぱりその先が無いじゃん。ってこと。
地デジ特需(が、あればいいけどね)がずっと続くわけじゃないしね。


結局、PCはPCでなければ出来ないことを創出し訴求し続けない限り細々とした買い替え需要で食ってくしかないってことだ。(もちろんコンシューマ向けって話でな)